第26章 ヒーローの顔を見る。
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警察に保護された爆豪は、ことのあらましを全て話した。
つい先程までひよこと共にいたこと、ひよこは今のところ無事であること、死柄木と名乗る男のこと、
ひよこのおかげで自分が助かったこと。
平然と、何事も無かったかのように話す爆豪だったが、手はぎゅっと固く握られていて、誰にも知られないうちに血がポタリと滴った。
暫くして雄英の教師が集まった。
彼の安否を確認するために。
彼の話を聞くために。
そこでも爆豪は、何も無かったかのように、なんの表情もなく、淡々と説明した。
警察署の電話は鳴り止まなかった。
職員はみな慌ただしくバタバタと走り回る。
賑やかな音の中のテレビ画面には、1時間前とは全く違う画面が広がっていた。
【雄英生徒一名保護!もう一名は未だ見つからず!!】
ソファに座って横目でそれを見た爆豪は、拳を握り、ぐっと歯を食いしばった。
「爆豪、安藤はなんて?」
ふたりの担任である相澤は、静かに、どこかで怒りを煮えたぎらせた声を発す。
「……んも…ってないっすよ…。」
いつも怒っている彼が、静かとは正反対の彼が、相澤の目には痛々しく写った。
「本当になにも?」
「……先生方は……悪くないからって……。だから、もう責めるのはやめてくれって……」
下を向いて、爆豪は小さくこぼす。
爆豪のつむじは、初めて見た。
そんな小さなことが、相澤の頭に浮かぶ。
「かっちゃん!!」
「爆豪!!」
耳に、その大きな音が響く。
その、耳慣れたノイズ音。
ドカン、バカン
また鼓膜が、殴られる気になる。
「うっっぜぇんだよ!!」
ポタリ
握った手のひらからまた、血が垂れた。
「緑谷、切島…。それに轟、飯田、八百万まで…。お前ら…なんだその格好…」
乗り込むために変装した格好のまま、あの5人がなだれ込んできたのに、相澤は静かに目を見開く。
「っあ、…う、こ、これは…」
「いいんすよ!それより爆豪!!安藤は!?」
「…っ…!!っる…せぇよ…!その名前っ…出すな…!!」
見たこともないような顔で絞り出すように発す爆豪に、緑谷と切島は、ビクリと肩を揺らした。