• テキストサイズ

夢を叶える方法【ヒロアカ】

第26章 ヒーローの顔を見る。


Side hero


新幹線は長野の山の中を真っ直ぐに、定規でひいた線の上を走るように進んでいく。


旅行から帰る人、出張から帰る人、実家から帰る人、家を出て一人暮らしをする人。


幸せな人も不幸な人も、嬉しい人も悲しい人も、その細長い箱で運ばれていく。



並々ならぬ決意を抱えた少年少女も乗っていた。


大切な人を、大切な友人を、助けるために乗っていた。

その緊張感も、ちょっとやそっとのものではなく、サラリーマンの電話の声も、思い出話に花を咲かせる声も、彼らの耳には届かなかった。



「引き返すならまだ間に合うぞ。」



緊張をしていても腹は空くようで、もくもくと駅弁を食べていた少年はポツリと言う。

隣でおにぎりを食べていた少年は、即座に返す。


「迷うくらいならそもそも言わねぇ!あいつァ敵のいいようにされていいタマじゃねぇんだ…!……あいつ…だって……」


前者の“あいつ”へは、真っ直ぐ迷いなく。

後者の“あいつ”は、迷いや苦悩を抱えながら。



「僕は……」

そして正面に座っていた、何も食べていない少年は、


「後戻りなんて出来ない。」


思いつめた表情でそう言った。



そんな、冷静ではない彼に厳しい声を浴びせる幼馴染は、いない。


そんな、思いつめている彼の話を親身に聞いて、そばに居てくれるあの子もいない。



彼らに考え直して欲しい人、彼らを監視し守ると決めた人、大切な人を助けようとする人。


そんな彼らは同じ箱に乗り、進んでいく。


箱は山を切り裂き、山は街へと変わっていく。

冷静ではない彼らには、景色など見る余裕はなかった。


/ 728ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp