第26章 ヒーローの顔を見る。
「勝己くんっ!!」
勝己くんに駆け寄ろうとすると、途中でぐいっと肩を掴まれ私は後ろを向かされる。
「っ!」
「まずはこっちだろうが。挨拶でもしろよ。」
力の強い4本の指は、私の肩にグイグイとくい込んだ。
死柄木さん、だ。
前見た時と違って、顔には手がペタリと張り付いている。それは不気味で不穏で。私の冷や汗はもう一度吹き出した。
「あなたこそ…なんで…」
「分かるだろ。お前の個性に用があんだよ。」
「は?たまごの…個性?どういうことだよ。」
勝己くんは私の“個性”という言葉に反応し、訝しげにこちらを見ている。
胸がキリキリと軋んで、勝己くんを視界から外すため下を向く。
肩をつかむ指の力はだんだん強くなって、私は冷や汗を垂らしながら睨み返した。
「ここどこですか?なんで勝己くんいるんですか!なんで縛られてるんですか!?」
大きな声を出したあと、私は全力で勝己くんに駆け寄り、拘束を外そうとする。
「…どういうことか説明しろよ…。」
勝己くんの声が、間近で聞こえた。それでも今は何も言えなくてただ、ごめんね、と一言言う。
椅子の拘束を外すと、誰かにポンポンと肩を叩かれ、私はきっと振り向く。
あの、ガタイのいいサングラスの人だった。
「手荒なことして、悪かったね。首、痕残っちゃったら大変じゃない。女の子なのに。」
?
優しいの?女の人、なの?いきなりなに?
いっそう混乱が渦巻く。
「…このゲームに必要なんだよ……」
「え?」
呆気にとられていると死柄木さんは小さな声でポツリと呟き視線はそちらを向く。オーバーな身振り手振りで、演劇調に話し始める。
「雄英の生徒が2人も一度に誘拐されて、まず責められるのはどこだ?ほらテレビを見てみろよ!」
【雄英大丈夫か!?】
死柄木さんがテレビをつけると、画面いっぱいに雄英高校を責める文字があった。
キャスターの隣のフリップには、イレイザーヘッド、プレゼントマイク、そして、オールマイト。雄英で働いているプロヒーローたちが載っていた。
液晶の光がチカチカと目に痛い。
私が、捕まっちゃったのがいけないのに。
私の、せいなのに。
先生方は、何も悪くないのに。