第25章 VANISHING POINT、
Side 緑谷出久
完全敗北、だった。
ブラドキング先生が通報していたみたいで…敵が去った15分後救急や消防が到着した。
生徒41名の内、敵のガスによって意識不明の重体15名。
重・軽傷者11名。
無傷で済んだのは13名だった。
そして…
行方不明2名。
プロヒーローは6名のうち1名が頭を強く打たれ重体。
1名が大量の血痕を残し行方不明となっていた。
一方敵側は、3名の現行犯逮捕。彼らを残し…他の敵は跡形もなく姿を消した。
僕らの楽しみにしていた林間合宿は、最悪の結果で幕を閉じた。
ひよこちゃんは1度、施設に現れたようだったが、それはニセモノだったらしい。
ごめんなさい、ごめんなさいとそのニセモノは何度も謝って、消えていったって。
『私は安藤ひよこじゃないけど、ニセモノだけど……でも、力になりたいのは同じなんです。あいつらの言うとおりになんて、絶対になりたくないんです。』
そう言って、たくさんのことを教えてくれたって。
一方、僕はというと
あの後すぐ合宿所近くの病院に運ばれた。
2日間気絶と悶絶を繰り返して高熱を繰り返したって。
リカバリーガールが訪ねてくれたみたいだけど、何一つ覚えちゃいなかった。
意識が戻って最初に頭に浮かんだのは、最後に見たひよこちゃんの笑顔だった。
あの、不器用で、大げさで、わざとらしい笑顔
なぜあの時、それでいいなんて思ってしまったんだろう。
それで、いいわけ無かったのに。
どうしてあの時、一緒にいてあげられなかったんだ。
いつだってそばに居たのに、どうして一番大切な時に、そばにいてやれなかったんだよ。
醒めたばかりの僕の眼に映る世界は、後悔と虚しさで、歪んだ。