第25章 VANISHING POINT、
Side相澤消太
「無駄だブラド。」
施設に戻ると、中にもあの敵がいた。
言葉を発しながら淡々と目の前の敵を倒す。
壊す、と言った方が良いだろうか。
この、ニセモノを。
蹴り、縛り、足で踏みつける。
そのニセモノはすぐにドロリと形を失った。
「見ろ。ニセモノだ。さっきも来た。」
表で冷静を装いながら、頭の中は最高速で算段を立てる。
まず、安藤がいないということ。
安藤がこの学校に来たのはもともと、敵連合から匿うためだ。
一番に狙われるのはアイツのはずだ。
しかし、安藤のことばかりのことを考えているわけにもいかない。生徒全員の安全が一番だ。
そして、爆豪。
ぐるぐると頭を回したままもう一度外へ向かう。
「敵が少ないなら尚更俺も……!!」
「ええ!数に勝るものなしです!」
「ダメだ!」
生徒らは懇願する。
必死に、縋り付くように。
そんなさなかだった。
壊れた扉の奥に、あの小さな影を見つけたのは。
かくりかくりと不自然な足取りでこちらに向かっている小さな影だった。
真っ黒の髪と、少し汚れた右目の眼帯。
首には赤く痛々しい、絞められたような跡がある。
思わず声を上げた。
「安藤!!!」
「あれ…?せん、せいだ…。」
俺の声で顔を上げた安藤は。
その顔は、
見たこともないほど、
なんにもない、普通の顔だった。
あれ、安藤って、こんな顔してたのかって初めて知った気がした。