第25章 VANISHING POINT、
【皆!!!】
頭に直接入ってくる情報に、少しの緊張が生まれた。
【敵二名襲来!!他にも複数いる可能性アリ!動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず撤退を!!】
緊迫したマンダレイの言葉で、頭の中が全て真っ白に吹っ飛ぶ。
そして次に浮かぶのは、やっぱり安藤だった。
ここに居るはずなのに居ない彼女。
昨日、追いかけることができなかった彼女。
昨日俺が、ひとりぼっちにしてしまった彼女。
大切な、大切な彼女のことだ。
「は……!?何で敵が____…」
「ブラド、ここを頼んだ。俺は生徒の保護に出る」
「先生っ!!!」
俺は、外に出ることも許されず、ここで黙って見ていることしかできなかった。
どす黒いモヤは時間とともに増して増して、もう押し潰されそうだ。
なぜ俺にはなにもできないのか。
なぜ、そんなの分かる。
だってまだ、“たまご”だ。
そんな資格持ってないから。
理屈では分かっても、そんなの、納得出来るわけない。
悔しい悔しい悔しい。
頭の中に生まれて言葉となって現れるのはただ、それだけだった。他は全部どす黒いモヤのドロドロの中に溶けていく。
**
それからしばらくして、戦闘許可がおり、それでも俺たちは宿舎の中にいた。
『生徒のかっちゃん!』
爆豪が狙われていると知り、そして未だに安否の確認ができない安藤を思い、外に出ようとした。
「だちが狙われてんだ!頼みます、行かせてください!!」
「ダメだ!」
「戦えって!!相澤先生も言ってたでしょ!!」
「ありゃ自衛の為だ。皆がここへ戻れるようにな。」
必死だった。
だって、いてもたってもいられない。
こんなところで何も出来ないなんて。
ガタッ
扉の方から音がして、相澤先生が帰ってきたと声を上げた。
「相澤先生が帰ってきた。直談判します!」
「……や…待て、違う!!」
ゴオッと炎が部屋に流れ込む。
ブラド先生が回避させてくれたが、その熱はすぐ近くで。
改めて“敵”の恐怖を知り、
そして、改めて安藤を思った。
人を“敵”にしてしまう、彼女のことを。