第25章 VANISHING POINT、
Side切島鋭児郎
『人を、敵にするって、もの。』
その言葉が頭の中でぐるぐるとまわっていた。
あの時、安藤の小さくなっていく背中を追えなかった。
あの時、体が全く動かなかった。
あんなに小さな背中であんなに重たいものを抱えていたのかという衝撃と悲しさと。
俺になにができるんだという悔しさで。
昼、先生に呼び出された。
『安藤の個性。聞かなかったことにしろ。』
『えっ』
『誰にも言うな。』
『…で、でも』
『危険なものだって分かるだろ。…こんなのが知れ渡ったらアイツはどうなる。』
『それは……』
『アイツも、それを望んでる。』
何も言えなかった。
彼女のために出来ること。
彼女が望んでいることは、
ただ何事も無かったかのように、何も聞かなかったかのように過ごすこと。
…だけ。
夜、肝試しの時間に招集された補習で、安藤が現れることは無かった。
次第に大きくなるどす黒いモヤを握りながら、俺は下唇を噛んだ。
虚しい。悔しい。
何も出来ないのが、悔しい。
そんな時だった。
マンダレイからテレパスを受け取ったのは。