第24章 涙をとめる方法

「洸汰くん。」
「うわっ！！なっ……なんだよまた安藤かよ！おどかすなよ！つかくんなよ！！」
「…ごめん…ね。…きみ、と、お話ししたくって。」
「はぁ？俺は話したくねぇし、早く帰れよ。」


声ひとつかけても、返ってくるのは相変わらず辛辣な言葉。
それでも、今はそれにほっとしている自分がいる。


「ううん…。ただ、私が一緒に居たいだけ。…君に、洸汰くんに、いてほしいだけ…だよ。」
「えっ……」


私が隣に座ると、洸汰くんは目をまん丸にした。
私の言っていること、納得出来ないみたいだ。多分、頭の中で理解できないんだ。


「変なこと言って…ごめんね。…私、ひとりぼっちは、いやなんだ。」
「はぁ？お前あんなに……」


洸汰くんはそこまで言って、言葉をピタリと止めた。


私の様子がおかしいって、賢い彼なら分かったからかな。
洸汰くんにまで気を使わせちゃった。


「ふん。そんなヘンタイだから友達なくすんだよばーか。」
「……そうなん、だよね…。」


洸汰くんの言葉は正直で、真っ直ぐで、当たり前で、正解で。


私が変だから。私が…“ヘンタイ”だから、みんなと居るのが辛くなったんだ。


私は下を向いた。


「ほんとに、だめだなぁ…わたし。」
「ふんっ、どうせまた、“ヒーロー”が助けてくれるんだろ？けッ気味わりぃ。くっだらねぇ！」
「…そう、だね。」


こぼした弱音に、洸汰くんは嫌味混じりに返してくれた。


想像してみた。


助けてくれるのは、やっぱり彼で、私は何をしてあげることも出来なくて、それで、最後……





もし私が、彼に“個性”を、使ってしまったら。

また大切な人を、傷つけてしまったら。





「……っ！？」
「なんだよ安藤。」


怖くなって、下を向いた顔をガバッとあげる。


想像してしまった。


一番怖いことを。


またそんなふうに大切な人を傷つけてしまったら、私はどうやって償えばいい。今だって目をそらし続けて、それでやっと、生きているっていうのに。


「…なっなんでも、ないよ。へーき。」
「下手くそな嘘ついてんなよばーか。」


5歳児にもバレてしまうような嘘を、私はついた。


ごめんねと彼の顔を見ると、彼の向こうに不穏を感じた。


不穏な、何かだ。





ここには、いてはいけないやつが。