第24章 涙をとめる方法
「安藤、お前今日の補習は休め。いいな。」
先生は私にこう告げた。
私はろくに返事もできなくて、ただこくんと頷いた。
多分、気まずいからとか、私にはそんなに努力する必要ないとか、そんな理由。
ていうか、今日私はなにをしてたんだっけ。
ぽつんとひとり立ち尽くし、そして少し辺りを見渡した。
「いてえぇぇえええええ!!!」
「うぉおおおおおおおお!!!」
「クソがァァァァァァァ!!!」
手をお湯に沈めたり、ドラム缶に入ったり、頭をぶちぶちちぎったり。
みんな、必死にやっている。
息切れをして、泥だらけになって、汗まみれになって。
それに比べて、私は?
まだ、綺麗だ。
ただ、変な髪型なだけじゃないか。
グイッと下を向いて服を握りしめる。
だめだ。だめだめ!!
なにしてんだよ。
今度はグイッと上を向き、必死に息を止め、舌を噛んだ。
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「よしっ!今日はみんな今日は最高の肉じゃがを作るのだ!!」
天哉くんの一言で、みんなは料理し始める。
お腹を少しさすってみても、なんもない。
お腹、減ってないみたいだ。
みんなは泥まみれで、汗まみれで、すごくかっこいい。
それなのに、私は全然…全然…なにもない。
なんにも、ない。
ただの、空っぽだ。
下を向きそうになるのを必死に抑える。
ふらりと見上げたその目線の先で、小さく動く背中を見つけた。
森の中に向かっている、あの、幼い彼の背だ。
彼は。
彼のとなりなら。
私はいても、いいのかもしれない。
足がふらりとそちらに向く。
彼について、私は森の闇に溶けた。