第24章 涙をとめる方法
前髪を噴水みたいにぎゅっと結び、それから後ろの髪の毛もぎゅっとかたく結ぶ。
「いたいっ……」
ぶちっと嫌な音と痛みが同時にくる。
固く結び過ぎたせいで、少し髪の毛が抜けたみたいだ。
そんな痛みも、今は気にならなかった。
さっき、部屋に戻った時、みんなは普通だった。
ふああと欠伸をして、普通に寝癖をつけて。
そんな姿に、すごく安心した。
それから、焦燥が一緒に来た。
私は、ここにいてもいいのかなって。
胸が、絞められているみたい。
ぎゅって、ぎゅうって、息ができない。
しゃがみこみたいな。でも、そんなことしたら、みんな心配しちゃうかな。
「…よ、よーしっ!!頑張るぞー!!!」
「お、安藤くん頑張っているな!」
天哉くんが大きな声で返事をしてくれた。
ちょっと休憩中みたいだったみたいだ。
「う、うん…。」
「補習も頑張っているんだろう?えらいな!」
「あ……うん…。」
なぜだか天哉くんの目が見れなくて、そっぽを向くと、今度は補習を一緒に受けた人たちが目に入ってくる。
先生にしぼられているみたいだ。
「何をするにも常に原点を意識しておけ。」
“原点”
先生の言葉が頭にがツンとくる。
私は、私の原点はいつだって…。
ぎゅっと体操服をつかむ。シワができて、少し跡が残ったけどそんなのは気にしていられない。
ふと、赤い髪が見えて、私はぐんっと下を向く。
「ん?どうした安藤くん、顔色が優れないが…」
「あっ…ううん!なんでも」
「そうか。無理はするなよ!熱中症には気をつけること!では俺は行く!!」
ばびゅーん!と天哉くんは一瞬で見えなくなった。
なぜだか胸を撫で下ろし、向きを変えた。
あの孤独な少年の後ろ姿が瞼の裏にチラついて、少しだけ、会いたいな、なんて思った。