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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第24章 涙をとめる方法


Side相澤消太


「せん……せい。」


合宿3日目の朝。
起床時間よりも1時間ほど前に安藤は俺の前に姿を現した。


ぼーっとする頭を抑えつつ廊下を歩いていたら、安藤は外から現れたのだ。


「安藤……?そんなところで何してる。」


頬や脚に泥をつけ、髪には落ち葉もつけて。


「先生……わたし……。」


ただ事ではなさそうな安藤の姿に、心が騒いで止まらない。


「えい……きり、しまくんに……いっ…ちゃった…んです……。」


“いっちゃった”


それだけで、安藤はなにをしたのか。何を思っているのか分かってしまう。


心がさっきと比にならないほど泡立った。


「なっ……なんでお前!!」
「ご……ごめんなさい。」


慌てて安藤の肩を掴み、揺さぶる。


頭にあの日の光景が広がったのだ。


普さんの、あの姿。


「私……え…切島くんなら……って……思って……でも、ダメだった……みたい…です。」
「そうか…。」
「先生…。…き……切島くんに、誰にも言わないでって……言って…くれませんか……?」
「……分かった。」


懇願するように、命を絞り出すように続ける安藤を見たら、分かったと言わざるを得なかった。


「でもな、安藤。」


危ないところだった。
自分が一教師であることを、こいつの担任であることを、一瞬忘れかけた。


全てあの日に、戻ってしまう所だった。


安藤に、担任である俺から、言わなければならないこともあるのだ。


「みんなお前を心配する。部屋に戻れ。起床時間までにな。あと泥を落とせ。」
「……うん……分かりました。」
「今回は俺がなんとかするから。でもこんなこと、もうするな。」
「……。」


袖を力いっぱい握りしめ、安藤は下を向いたままこくんと頷いた。


わるいな、安藤。
ごめんな、“ひよこちゃん”。


俺には、これぐらいしかできない。
安藤に“もうこんなことするな”なんて、辛い言葉だろう。


わるい、わるかった。
ごめん、ごめんな、すまなかった。
ごめんなさい。普さん。


こんなことをしても、頭の中でどれほど謝っても意味は無い。
合理的ではない。


でも、こうせずには、謝らずには、居られないのだ。
誰も悪くは無いって…わかっているのにな。


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