第23章 呪われ
「こんばんは、洸汰くん。ひとりで過ごす夜もなかなかオツですね。」
「わっ!……なんだ、ヘンタイじゃないか。驚いて損した。つけてきたのかよキメェ。」
「…ヘンタイ……キメェ……。」
1人で崖の上に座り込む洸汰くんの隣に座るやいなや、そんな言葉の弾丸がビュンビュン飛んできた。それらは1弾残らず命中!私の心に見事な風穴を開けた。
洸汰くんがいたところはとても静かで星がきれいで、カレーを食べてどんちゃんしているみんなの声は全然聞こえないところで、なんでか少し心が落ち着いた。
「ステキな場所だねぇ。星もキレイだし!」
「俺のひみつきちなんだけど。でてけよ。」
「うっ……かっカレーっ!みんなで食べよう?すっごく美味しくできたと…思うけどな。」
「人参吹っ飛ばしてたやつが言うな。」
「ぐぇ……」
気を取り直して声をかけるも、彼は私の醜態を見ていたようで、もうぐうの音も出ない。カエルが轢かれたときみたいな声が出た。
「だから言ってんだろ。ヒーローになりたいとか言う奴らと一緒にいたくねぇし、関わり持ちたくねぇ。」
「うーん……でも、カレーに罪はないよう……」
頭にあの百点満点のヴィジュアルを思い浮かべる。
そんなカレー談義に花を咲かせようとした時だった。
いっつもの、彼の声が耳に入ってきた。あの、ヒーローの声。
「あれ?ひよこちゃんもいたのか。洸汰くん、お腹すいたよね。これ食べなよ。カレー」
「てめぇも……なんでここが!」
「あ、ごめん。足跡を追って……食べないのかなぁと。」
私が小さく手を振ると、出久くんはにぃっと少し笑って返してくれた。その笑顔が眩しくて、私から手を振ったくせに下を向く。
「いらねぇよ。言ったろ。つるむ気などねぇ。俺のひみつきちから出てけ。」
「ひみつきちか…!」
洸汰くんはさっきよりもずっとずっと怒った顔で、すごい剣幕で、出久くんを睨みつけた。
「“個性”を伸ばすとか張り切っちゃってさ……気味悪い。そんなにひけらかしたいかよ。“力”を。」
“個性”という言葉が頭の中でぐわぐわんと反響する。
体感温度が少し下がる。
言葉だけでこれか…と自分の身体に少し呆れた。