第23章 呪われ
Side 相澤消太
「あちきにサーチされたいっていうのはキミ?」
「……。」
「はい、安藤です。見てやってください。」
安藤は声を出さずに小さく頷いた。その顔をチラとみると、顔色は最悪。真っ青だ。
見えたのは一瞬。
すぐに顔は下を向いた。長い前髪に隠れてしまったらもう見ることはできない。
「うんー!おーけー!」
いやに元気な声を出し、ラグドールさんは大きな目をさらに大きく見開いた。
それにビビったか、安藤はびくりと肩を揺らす。
おどおどと怖がった顔は、あの日と全く変わっていない。
彼女だけがあの日に囚われたまま動けていない。彼女の周りだけ、あの日のまま時が止まってる。
人のこと言えないかもな。
なんて自傷してみるが……俺は案外ちゃんとやってると、改めて気づく。
あの人の事務所から離れて、教員免許とって、今やひよこちゃんの担任だ。
人生ってなにが起こるかわかんねぇもんだな。
そんなじいさんみたいな事を考えた。
「うん!わかった!安藤さんの個性!」
「っ…」
パチリと瞬きをしたラグドールさんの前で安藤は青い顔のままピキリと固まった。
「そっちので困ってんでしょ?怖い個性だね。そんな__」
「いっ!言わないで!……下さい。…わっ分かってるから。ちゃんと…知ってるから……。」
安藤の眼帯を指さすラグドールさんに、安藤は大きな声をあげた。今まで黙りこくっていた癖に、あまりに突然に、大きく。
その反応からは、少々目をそらしたくなった。
だって、あまりに痛々しくて。自分の傷まで、思い出してしまいそうだったから。
乾いていない、生のままの傷。
大きく横たわって、安藤の居場所を奪っている傷。
それはきっと、向き合わないとカサブタにはならない。
「ごめんね…。でも、安藤さん。いつまでも目をそらしては居られないよ?」
「……はい…。」
安藤は、震える声でそう呟いた。
それから、ラグドールさんは続ける。
ラグドールさんのその次の言葉は、安藤から震えをも奪ってしまうものだった。
「安藤さんの個性はね____」