第23章 呪われ
さて、これからどうするか。
個性とか訓練とか、そんなの出来ないし。
うむ、と足を肩幅に広げその場に腕組みをして立つ。
「おい。安藤はこっちだ。」
「へ?」
どっしりと仁王立ちをかましていた私に、先生は静かに声をかけた。
「ちょっと来い。」
「な、なんですか…?」
先生の表情が読めず、じりっと一歩後ずさる。
無意味に、小さくファイティングポーズをとって。
そのへっぽこファイティングポーズにイラッとしたのか少しだけ怖い顔をして、それからまたいつもの無表情になる。
そして少し言いにくそうに、重々しくつぶやいた。
「お前の個性の話だ。」
「……え、わ、わたしの?」
私の“個性”
先生の声で、背筋がピキリと凍りついた。
「な、なん…なん……ですか?まさか伸ばす…なんて言わない、ですよね……?」
「なわけないだろ。」
「あ、あはは……で、ですよねぇ…。」
今日の目標を思い出して、少しだけ笑いも混ぜる。笑顔、笑顔……。
でも次の先生の言葉で、その無理につくった笑顔はすぐにボロボロと剥がれていった。
「お前の個性のこと、詳しく知りたいと思わないか?」
「……え?」
「お前の個性は未だ未知なんだよ。理解しない限りは対策のしようもない。プッシーキャッツのひとり、ラグドールさんの個性はサーチ。それでいろいろと分かるだろう。」
ビューっという風の音とみんなの頑張っている声ばっかり耳に入ってきて、言葉の殆どが頭を通り過ぎていく。
ずっと、向き合っていなかったものだから。
ずっと、眼帯で塞いでいたものだから。
とうとう、この日が来た。
とうとう、向き合わないと行けない時が来たんだ。
心の中にあった爆弾が、今爆発しようとしてる。
ぶぶぶ、ぶぶぶぶぶ
それで、
バッコーン!!!!
跡形もなく木っ端微塵!粉々だ!
爆発しちゃったらどうなるのか、誰にもわからない。
そんなことが一瞬で頭の中で流れていく。
それと同時に、冷や汗もぶわっと吹き出す。
「い、いや…いや、そんな、あ……。」
「一緒にこい。」
先生は私の腕をぐっと掴み、すたすたと歩いていく。
それには抵抗できなくて。
だって、先生のそれは正しい行動だから。
私にはただ来たる爆発に恐れることしかできなかった。