第23章 呪われ
AM 5:30
朝の爽やかな空気に、先生の低くて落ち着いた声が響いている。
早朝に外に集められたみんなは、凄く眠たそう。寝癖がすごかったり欠伸をしていたり。私も釣られてひとつ欠伸を。ふあぁ。
「本日から本格的に強化合宿を始める。」
“強化合宿”という言葉で、私の背筋はぴしんと伸びた。
今日は沢山頑張って、沢山笑うんだ。
そう改めて心に決めて、頬をパチリと叩く。それからぐにりと頬をつまんで持ち上げる。
今日はおセンチになってる暇なんてないぞ!
絶対にみんなと頑張るんだからな!!
むんっと意気込んで前を向く。
「くたばれ!!!」
FABOOM!!
「んひっ…!」
前を向いた瞬間、とんでもない怒号と爆風が巻き起こり、思わず声が出る。
勝己くんがボールを投げた音みたいだ。
勝己くんは個性を用いて、ボールを全力で投げたらしい。
学校に来たばっかりの時、みんなこういう体力測定をしたんだって。それで、それからの伸びを測ったらしい。
でもその結果は「あれ…?思ったより…」と声が出てしまうほどの記録だった。
「約三ヶ月間、様々な経験を経て、確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメインで“個性”そのものは今見た通りで、そこまで成長していない。だから」
先生の息継ぎと共に、みんなも息を飲んだのが聞こえた。
私も思わず息を飲んだ。
個性が成長してるとかありえないけど、なんとなく。
「今日からキミらの“個性”を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも……死なないように。」
先生は意地悪な顔で、そんなことを言った。
指を一本立てて、なぜだか何処か自信満々で。
あぁ、この世界はやっぱり個性ありきで。
胸に直接グラグラくる。さっき決めたあの心は、さっそくポッキリいきそうで、私は胸をぐっとつかんで何とか足を踏ん張った。