第22章 must to be
ダルダルの長袖とゆるゆるの短パンを急いではいて、びしょびしょの髪のまんま、私は廊下を走っていた。
洸汰くん。洸汰くん。
洸汰くんが心配だ。
パタパタと走りながら、何処へ行くかもよく分からないまま、男風呂に行くわけにもいかないし、とりあえずマンダレイさんのところへ走った。
「すみませんっ!あの、洸汰くんがあ゛ぁぁぁああああ!!」
扉を開けて、私は絶叫した。
目の前に、タオルを巻いただけの出久くんがいたからだ。
慌てて手で左目を隠す。
指の間からちらりと見ると、やっぱりほぼ全裸の彼が。
「ごめんなさぁ゛ぁぁぁああああ!!」
「安藤さんっ落ち着いて!!プールと同じ露出度よ!」
「ひよこちゃーーん!」
だって、小学校のときの体から全然想像出来ないムキムキで。よく知っている顔の下に、知らない男の人の体がくっついてるみたい。
顔はかっかとして活発に血がめぐる。そのせいで一瞬ここに来た理由を忘れかけた。
そんなんじゃあかんっ!と早口で言葉を吐き出す。
「洸汰くんっ!!の、だ、大丈夫でっ…すか?」
「あら、心配して来てくれたのね。ありがと。」
「いえっ、あの」
「洸汰なら平気。落下の恐怖で失神しちゃっただけ。緑谷くんが助けてくれたわ。」
「そ……ですか。よかった…。」
極力出久くんの方を見ないように、洸汰くんの姿を確認する。苦しんでる様子は無くて、ほっと肩をなでおろす。
ポタポタと髪から水滴がこぼれてる。
温かかったお湯も冷えていて、私はやっと肩におちるその冷たさを感じ始めた。
「洸汰のこと、気にかけてくれてありがとね。」
「いえ…ただ……ちょっと気になって…。」
「……。」
マンダレイさんとピクシーボブさんは、切なそうに微笑んでいて、ちらりと見た出久くんの顔はは、苦しそうだった。
一体、なんの話をしていたんだろう。
聞いてみたかったけど、何となくやめた。
「ほら、この子は大丈夫だから!安藤さん!髪乾かして!キミは服着て!」
ポタポタと滴りおちる雫を感じながら、出久くんとわたしは小さく頷いた。