第22章 must to be
カポーン
「気持ちいいねぇ」
「温泉あるなんてサイコーだわ」
見上げればキラキラと星が瞬いていた。
酸素を吸えば爽やかで、私はホッと肩を落とした。
お風呂のときは、なにも考えなくて済む。
「気持ちいい……」
「ですわね。」
私のこぼれたつぶやきに返してくれたももちゃんの方をちらりと見ると、自動的にアレが目に入った。
ぼ……ぼいん……だ。
周りを見ると、みんな結構ぼいんで、反射的に体操ずわりになった。
反射的に自分のを見下げると、あら。
なんの障害物もなく足が見える。
ちっぱい……。
ささやかとか……こぶりとか……かわいらしい…。
そういう風に自分を励ましていると、響香ちゃんにぎゅっと抱きしめられた。見下げていたのを見られていたらしい。
「量より質が大事。」
「量より質。」
量とは一体なんなのか、質とは一体なんなのか。
ちゃんと分からなかったので、私はただその言葉を繰り返した。
「峰田くんやめたまえっ!!」
男子のほうのお風呂で、天哉くんが怒鳴っている声が聞こえる。
あっちの声も聞こえるんだなぁとぽかんと考えたが、すぐにその言葉の危険性が頭に浮かんでくる。
峰田くんって……えっちなんだった!!
このささやかな胸を見られたらいろいろと恥ずかしい。必死に手で胸を隠す。
みんなは峰田くんにキレ始めていた。
「峰田くんなんなん。」
「ないわー。」
「信じられませんわ。」
「Plus ultraー!!」
遠くから雄叫びのような校訓が聞こえてくる。
危機が迫っているのを感じ足を抱える力をきゅっと強めた。
壁をハラハラと眺めていると、明らかに峰田くんではないあろう影がぬっと現れた。
「洸汰くん…!」
小さい男の子の背が壁の上に現れ、いろいろと驚く。
「ヒトのあれこれから学び直せ。」
それが子供のセリフか。と。
最近の子は育つのがはやい。いろいろと。頭だけじゃなくて、胸とかも。
「やっぱり峰田ちゃんサイテーね。」
「ありがと、洸汰くーん!」
こちらの風呂から歓声が湧く。
洸汰くんは女体に驚いたのか、こちらをチラと見るとうわと声を上げ後ろへ倒れていく。
「こっ洸汰くんっ!!」
落ちていく姿が家のみんなと重なり、風呂で火照った私の顔は一気に青ざめた。