第22章 must to be
「…よく、わかんないな……。」
「はぁ?」
「…ごめん、今は自分の頭の中が、よくわかんなくてさっ……。また分かったらちゃんと言う。」
「意味わかんねぇ。安藤変だろ。安藤ヘンタイだ。」
「うっ……うん。……私、し……シシュンキだからね!シシュンキってね、変なの!シシュンキって変態なの。洸汰くんにもいずれ来るんだよ!シシュンキ!」
なんとかお茶を濁し、答えを濁した。
すべて、子供から大人になる時のみんなに訪れる生理的なもののせいにして……私はみんなを巻き添えにして嘯いた。
ひとりぼっちが嫌で、そうやって言葉の中だけでも、洸汰くんの頭の中だけでもみんなと同じで居ようとした、私の小癪な考えだ。
にぃっと目を細めイタズラをした時のような笑顔をうかべると、洸汰くんは怒った顔をした。
「なっ…んなわけねーじゃんか!!ばーか!俺は変態にはなんねぇ!!安藤は変態でバカだ!変態バーカ!!」
「ばっ…バカじゃないし!!」
「いや、変態否定しねぇのかよ。」
バカと言われたことを怒っていると、偶然通りかかった範太くんにつっこまれた。
「あのガキンチョとちゃんと仲良く喋れるなんてすげぇな。」
そう耳打ちをして彼はまた席へと戻っていく。
仲良く…かどうかは分からないけれど、さっきよりずっと子供らしい顔をしている洸汰くんを見て、私は嬉しくなる。
「あっこの荷物は私が持つ!よっしゃ!早い者勝ちだよ。」
「あっ!なんだよガキか!勝手に持つなよ!」
子供にガキと言われるとは……。
うーむと頭を悩ませるけれど、“勝手にしろよ”の言葉が変わったことが、やはり嬉しい。
もっとこの子と仲良くなりたいな、と笑顔の裏で考える。
止まれなかった私は、岐れ路からぷいと目をそらした。