第22章 must to be
PM5:50
私はみんなより30分も後に宿舎に着いた。
心身ともにヘロヘロで、私は森を出てすぐ、ぺたりと座り込んだ。また、鼻からなにか温かいものが出てる気がする。血かな。
「安藤さん!心配したのよ!大丈夫だった!?」
「…はい。すみません。心配かけて……。」
「何であんなことしたのよ。」
宿舎の前で待っていてくれたのは、茶色の髪と、赤いコスチュームの、プッシーキャッツのひとりの人。
「自分でも……よく分からなくて…私には……なにが、ゴールなんだろうって……。」
「…そっか……。」
座り込んで下を向いたまま心を打ち明けると、その人は腕を貸してくれた。顔は見れていないけど、いったいどんな顔をしてるんだろうと少し不安になった。
「本当に、心配かけてすみませんでした。」
泥や土のついた足やスカートをパンパンと叩く。それから再度頭を下げると、彼女はにっと、なんだか心強い微笑みを返してくれた。
「いいのよ。あ、みんなもうご飯食べてるから。」
「……はい。」
「さっ!暖かい方が美味しいでしょ?はやくおいで!」
“おいで”の言葉に私はこくりと頷き返した。
“おいで”が、どうしてだかとても嬉しくて、私は一瞬疲れを忘れた。
遅れたからご飯の席では浮いて、味なんてわかんないと思ったけど、ご飯は本当に美味しかった。みんなもご飯に夢中であまり気にしてなかったし。
お米はつやつやで、噛めば噛むほど甘くなるって、初めて知った。温かいものがお腹に溜まっていく感じがする。唐揚げも、口に入れると火傷しそうに熱く、でもその温かさが心地いい。口の中でジュワァっと溢れるにくじゅうがたまらない。
そんなふうに食の素晴らしさに没頭していると、目の端に、またあの小さな男の子が写った。
ひとりでお手伝いをしているようで。
私はその子から、目が離せなくなった。
何故なんだろうか。うちのみんなの事を思い出したからだろうか。分からないけれどどうしても気になって仕方がなかった。
「あの子は…?」
「あぁ、安藤さんには言ってなかったね。あの子は私の従甥。洸汰。」
おかずを持って歩いていたさっきのお姉さんに聞くと、“洸汰くん”というらしい。
ご飯は1杯で意外とおなかいっぱいになった私は、やっぱりあの子が気になって席を立った。