第22章 must to be
無理って分かってるのに、諦めるな、頑張れって、そんなのしんどいだけだ。
それに、私はなんで頑張ってるんだろう。
みんなに、追いつくためって思ってた。ここに居てもいいように、自分の居場所が欲しかった。
でも、最近なんだか目標が変わってきている気がする。
ヒーローに、なりたい。
そんなのが、芽生えているような、そんな気がする。
そんな叶わない夢は、はやく諦めないと。夢に見ることも、多分ダメ。許されないこと。
でも、さっきのあれは。
『ヒーローになるためにここにいる訳じゃないでしょ』
その言葉にショックを受けたのは、きっと私が、目指してしまっているからだ。
頭では目指しちゃダメだって、分かってるのに。心が言うことを聞かないのはなんでだろう。
『おとうさんみたいにやさしいヒーローに』
風が耳にまとわりついてうるさい。
木の葉に光が遮られて、ここは暗いし寒い。
遠くに小さく見えるみんなの背を追い、私はひたすら森を駆けた。駆けずり回りながら、ひたすらそんなことを考えている。
私はどうすればいいの?
歩き続けないと、走り続けないといけない。諦めちゃ、ダメだ。
でも、そんなのしんどい。
ゴールもろくにないのに、私はどこを目指しているんだろう。みんなには、ちゃんと目標もゴールもあるのに。私は?
私は将来、どうなっているんだろう。
漠然とそんな事を頭に浮かべると、急に目の前が今度は真っ黒になった。
後ろから大きな黒い塊にのしかかられたみたいに、動けなくなった。
怖かった。
私には将来、ちゃんと居場所はあるのだろうか、と。
はっと気がつくともう、みんなの背中は見えなかった。
「…あ、あれ?おっ、おぉぉ……い。」
声もあまりでなくて、私の心はどす黒く塗りつぶされていく。
「んぁあっ!!」
無意味に奇声をあげ、頬をバチンッ!!と叩く。
鈍い痛みが頬から広がって、少しだけその黒いのは薄れて、私はひたすら足を動かした。
今は、前へ。
ただ前へ。