第22章 must to be
「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね。」
「バスに戻れ!!早く!!」
プッシーキャッツさんのひとりがそう言うと、みんなは一目散にバスへ逃げる。
「おいっ!安藤!なにぼーっとしてんだよ!」
「…たぶんへーき……。」
「はぁ!?」
そう腕を掴まれるも、私の足はまだ動かなかった。
多分これは、
もう合宿なんだ。
もう、“強化”合宿なんだ。
覚悟を決めて前をキッと向くとその途端、私の周りは全部土流にのまれて、みんな山に流されていった。
みんな、私を置いて。
のまれなかったことに私は驚いて、先生を振り返る。
「な、なんで……!?」
そんな単純な疑問の言葉を口に出すと、先生はまたもマイペースに口を開いた。
「お前には、無理をさせない。学校でそういう結論に至ったんだ。」
「え…?」
耳から音が遠くなった。
遠くでノイズがする。みんなの悲鳴や掛け声。
「私らもあんま無理させたくないのよ。あなたって、“ヒーローになるために”ここにいる訳じゃないでしょ?」
「無理にあの子たちに揃えなくていいからね。」
目の前が、真っ白になった。
周りの音はもう完全に消えて、今ではあのノイズが恋しい。
確かにそうだ。
私は、守ってもらうため。
救けてもらうためにここにいる。
ヒーローになるためじゃない。
そんなのは、最初から知っていた。
分かっていたはずなのに、なんで今私は、こんなにショックを受けているんだろう。
「い、や…です。」
「え?」
タッタッタッ
次の瞬間、私は木の柵に向かって走っていた。
ぴょーんっ
私の持ち前の普通以下の運動神経で柵を飛び越え、私は山に飛び込む。
「ちょっと!!安藤さん!!」
「おいっ!安藤!!」
そんな言葉を、背に聞きながら。
こんな行動をした私が、自分が、理解出来なかった。