第22章 must to be
Side 切島鋭児郎
安藤は、黒目がちな大きな瞳をぱちぱちと何度か瞬かせてこちらをぽかんと見つめた。
「す、座って…も、いいよ?」
「おう。ありがと。」
1人で一番前に座り、小さくまとまっている姿なんて見て、放っておけるわけ無かった。
普通に、隣に座りたかったのもあるけど。
安藤は大きな荷物を胸に抱いて不思議そうに未だこちらをチラチラ覗いている。
そんな視線も、なんだかむず痒くて、愛しくて可愛い。
ブロロッとバスがエンジン音を上げると、同時に安藤は申し訳なさそうに声を上げた。
「…いいの?電気くんとかさ……仲良しと一緒にいた方が、楽しいんじゃ……。私なんかが隣だったらさ、つまんないよ…。私、多分寝ちゃうよ?」
安藤は、眉を下げて、不安そうな顔をする。
俺はそんな不安そうな顔をさせたくなくてにっと笑い明るい声を出した。ぽんぽんとわざとらしく肩を叩いてきながら。
「いいよ!俺が安藤の隣に座りたいんだし。好きな子の隣に座りたいのは当たり前だろ?」
「っ…!……そっ…!……な、んだ……。」
“好きな子”
その言葉を出すと安藤の顔はぼっと赤くなった。