第22章 must to be
「おい、なんでいる?」
「お邪魔……して…させて、いただいていま……おります」
カルピスのグラスを手に取ったまま、グルンと後ろを振り返る。
お風呂上がったばっかりで、ホカホカ湯気がたっている。首からタオルを下げていて、少し、髪から水が滴っている。ラフな格好で、それで……。
真顔でこちらを睨んできている。
爆豪勝己くんが!
「あ!勝己!ひよこ遊びに来てるわよ!」
「勝手に家に入れてんじゃねぇよ!」
「やだ照れちゃって!」
「照れてねぇ!さっさと帰らせろや!」
「まぁ!またあんたはそんなこと言って!ひよこに愛想つかされるわよ!」
「どーでもいいわ!!」
親子の何気ない会話を聞きながら、私は急いでカルピスを飲む。こってりとした甘さが喉に絡みながらも私は必死に流し込んだ。全部流し込んだら立ち上がろう、そう決意する。
勝さんだけが心配そうに今私を見ている。私の早飲みの保証人は彼1人だろう。
「もー!あんたいつもそんな口調だとモテないでしょ!」
「あ゛ぁ!?」
「どうしても貰いてなくなったらひよこに頼もうと思ってたの!」
「ゴフッ」
マンガとかで飲み物吹き出すシーンって、脚色されていると思ってた。でも、案外脚色してないんだって、頭のどこかで思った。
カルピスが喉に絡んでむせる。大丈夫かい?という勝さんの声が遠くから聞こえた。
苦しい、喉が…かなり苦しい。陸上で溺れてる感じ。自然と瞳も涙で潤む。
口のはしっこからカルピスが垂れているのを、皮膚の感覚で感じる。ぐいっと拭って、それからいろいろグルグル考えた。
貰い手?貰い手ってなんだろう?飼育員かな?でも、勝己くんモテるよね!多分、告白とかされたことある、と思う!結構貰い手よりどりみどり選びたい放題なんじゃないのか?イケメンだし。うん、結局はそこだ。顔がよければ人は寄ってくる!そういえば、さっきテレビ出てた人かっこよかったなぁ。
「あー!ごめんごめん!ひよこ大丈夫?大丈夫よ!ひよこがあんな阿呆は嫌だって言ったら大丈夫だから!」
「誰が阿呆だ!死んでもてめぇには言われなくねぇ!!」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です…。」
それは何に対しての大丈夫だととらえられたのか、少しだけ不安になった。
貰い手問題であるならば、私は即答する。
大丈夫じゃないです。