第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
「オーバーザ、レインボー……。」
「ミュージカル映画の、オズの魔法使いの……劇中の歌で……、」
ぽつりぽつりと言葉を繋いでいく。
なんだろう。糸で繋がってたみたい。糸で通したビーズを吐き出しているみたい。
「オズの魔法使いは知ってる。」
「…大好きな…話なの。」
轟くんは座っている私の席の隣に立った。
なんでそこに立ったんだろう…。やっぱり轟くんのこと、よくわかってないのかもしれない。
やっぱり顔を上げることが出来ず、シャーペンをぎゅっと握ったままもう1回、糸で通したビーズを吐き出した。
「知恵と、心と……勇気が欲しかったんだよね。」
「あぁ。確かそうだったな。」
なんとなくシャーペンを動かして、こんな状況に勉強はできないなとかかしとブリキの人形と、ライオンを描いた。
2人には、なんだか凄く愛着が湧いた。
「お、なんかすげぇ微妙な顔してんな。」
「えっ!いいかんじに描けたと思ったんだけどなぁ……。」
頭悪そうなかかしと、真顔のブリキの人形、それから悲しそうなライオンを描いたつもりだったけど、なんか違うものになっちゃってたみたいだ。
そんな出来損ないの3人組を指でさすった。
「…私、この3人が大好きなの。」
「そうなのか。」
「何でだろ、覚えてないんだけどね。」
なんとなく、懐かしくてなんだか胸が、きゅっとした。
でもやっぱり、ドロシーよりこっちの方が愛着が湧くんだ。
「ドロシーは、前向きで、行動力があって、優しいから……大好きだけど、でも……ちょっと眩しくて。」
私には、全部無いところだから。
きっと夢の国に行けるのは、そーゆー子だけだから。
私は…なんにも。
「……私はこっちのが似てる。」
そう言って私は不格好なライオンを指さした。