第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
ぱっと顔を上げて真っ先に飛び込んできたのは、いつもの教室だった。
みんながニヤニヤとしながらこちらを振り返っている。
次に気づいたのは、口の端の異変。
なんだか、濡れている……。寝ぼけたままぐいっと拭き取る。
……。
ヨダレだった。
そして、目の端に映る黒い影から殺気が発せられているのに気がつく。
ぎぎぎと首を横にすると……やっぱりだ。先生がいる。
その顔だけで5人は殺れる……そんな顔だ。
「殴っても殴っても起きねぇって、どんだけ図太いんだ。」
「…わたし……いま…だいぼうけん…」
みんなのクスクスという音がなんとなくぼやっと聞こえてくる。そのクスクスをBGMとして先生は続ける。
「夢まで見やがって…。」
「…す……すみません…」
先生の顔を見ながらぱちぱちと瞬きをしていると、だんだん目が冴え、頭が覚醒し始める。
脳が覚醒してくると、クスクスの音量が大きく聞こえ始めて、羞恥心が芽生え、顔が赤くなっていく。
「……ほんとうに…寝るつもりじゃありませんで……つい……。すみません…。」
私は顔を真っ赤にして俯き、蚊蜻蛉のような声を出す。先生は隣で大きなため息をこぼして言った。
「お前には素敵なプレゼントを贈呈する。これ今日中に出さないとこの授業、出席していなかったことにするからな。」
「…すみません……。」
先生は授業後、素敵なプレゼント(プリント3枚!)を私に贈呈すると、とっとと去って行った。6限の授業後なのに、今日中に提出しろなんて鬼でしかないが、今回は完全なる私の過失で、黙って言うこと聞くしかなかった。
さっき見ていた夢は、起きた瞬間に輪郭がぼやぼやとして、一体なんだったのか忘れてしまっていた。でも、鋭児郎くんや天哉くんには、なんだか……不思議な感じがした。