第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
「ほ……本当なんですか?」
「あぁ。俺は嘘はつかない。」
「もはやそれが嘘だ!」
目の前の小汚いおじさん(今だけ許して先生!)を大王様と崇める人は今この玉座にはどこにも居なかった。
3人揃ってそのおじさんをじとりと訝しげな目で見ている。トトは玉座を楽しそうに走り回っている。いいな。私も混ぜて。
「まずお前、お前の願いは聞いてないぞ。聞いてもいない願いなんぞ叶えられるか。」
おじさんは私をゆるっと指さして言った。
確かにそうかも…。
「確かにそうだな!」
「一理ある。ほら!早く言いたまえ!」
「あ、え……えっと」
まごついて言葉がちゃんと出てこない。
口をぱくぱくしてもなかなか音が出てこない。
そしてやっと、かすれた音で現れた。
「…家に……帰りたくて……」
尻窄みになったその言葉が彼に届いたのか分からなかった。
彼は無表情で半目のまま、言葉を返した。
その声に色はないけれどなんだか的確な気がして、私は少し吃る。
「違うだろ。お前の本当の望み。」
「えっ、ち、ちがうわけ」
「本当の望みも、お前に必要なものも。」
「必要な、もの?」
彼と話していると、なんだか玉座に2人だけな気がし始めた。
さっきまで走り回っていたトトのチャッチャッという足音が聞こえない。
「お前に必要なものは」
「私に…必要なものは……」
なんとなく彼の言う“必要なもの”とは何なのか、分かるようなきがした。
口に出したくはなかった。
先生はそこまで言うと、つかつか私の目の前まで歩いてきた。
そして、何故かゴツンゴツンと頭を殴り始める。
ゴツ
ゴツン
ゴツンゴツン
あれ、おかしいな。夢なのに……
「すっごく痛い!!」
そう叫んで私は“起き上がった”