第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
「脳みそないなら何が入ってるの?」
「藁だ。」
「わら。」
なんとなく意味の無い会話を続けながら歩く。
さっきの道はそこら辺にあった棒を倒して行く先を決めた。結構アバウトでも大丈夫だろうというかかしさんの意見を聞いたからだ。
意見してくれるっていうことは脳みそあるって事なんじゃないのかなって思ったけど、黙っておいた。
歩いていると辺りは一面森になり、一気に暗くなってきた。
「暗いね…ちょっと怖い……。」
「俺、マッチ以外なんも怖くないぜ。」
「マッチ怖いんだ。」
強がりではなさそうなかかしさんの言葉を信じ、かかしさんの腕をぎゅっと抱く。かかしさんは人間じゃないから羞恥心湧かないし、藁の匂いが心地いい。
「な、なんか近くねぇ?」
「え……ご、ごめんなさい。かかしだからいいかなって…。」
「そういうかかし差別良くないぞ。」
ギィ……ギシッ…ァア゛…
そんな緩い会話をしていると突然、そんな和製ホラーの不快な効果音みたいなのが耳にこだまする。
「な、なんか音…した?」
否定の言葉を求めてかかしさんに声をかけるも、
「したな!あっちか。俺ちょっと見てくるわ。」
「怖いもの無しか」
藁の腕はするりと私の腕から離れていき、彼は森へと入っていった。1人でいるとこの森、かなり怖い。手がブラブラするのが怖くてトトをぎゅっと抱き上げた。
「か、かかしさーん?まだですかー?早く帰ってきてくださーい」
「ちょっと!こっち!こっち来て!」
「ええっ」
かかしさんの声を頼りに森を進む。
胸にいるトトが暖かくてすごく頼りになる。
木々の間にかかしさんの服の色が見え、ホッと一息つく。
「かかしさん?どうした……の゛…」
そして即座についた息をのんだ。
「な……だ、大丈夫かー!!天哉くーん!!」
「おっ?知り合い?」
蔦や草まみれになって、あとサビで動けなくなった、ブリキの天哉くんが立っていた。
このキャスティングはなんとなく想像ついていたけれど。
「ギィ……ア゛ァア……ギシッ……」
「君があの音出てたのか!」
「おい!此処に油差しあるぞ!使おう!」
「わ、分かった!」
私は油差しを手に、ぺっこんぺっこんと天哉くんの節々にかけていった。すごくシュールな光景だったと思う。