第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
偉大なって…自分で言うんだ……。ラスボス来ちゃった。
そこら辺を飛び回っていたトトはきゃいんきゃいんと胸に飛びついてきた。
突然のラスボスの登場に呆気にとられていると、勝己くん、いや西の魔女さんが物騒な事を言い出した。
「じゃあテメェを殺れば其奴殺ったことになるって事でイイよなぁ…!!」
「えぇ!だから、あれは事故ですって…!!」
必死で弁解するも、彼はギラついた目でこちらを睨んでくる。その顔はやはりお馴染みのものだった。
しかし、決定的に違うのは、いず……北の魔法使いさんが西の魔法使いさんとがっちり対等であることだった。むしろ北の魔法使いさんの方が強い勢い。
「ちょっと野蛮なことはやめてよ!」
「あ?」
「彼女はこれから帰るんだから!」
「……帰る…。」
そうだった。
物語は、ドロシーがカンザスに帰るまでのお話。私の目的も、帰ること……のはず。
『ひよこただいま!』
『おとうさんおかえり!』
『おかえりなさい!』
ふっと一瞬、父と母と3人で暮らしたあの家が頭に浮かんだ。
帰るって……どこに?
何処になら、帰れるの?夢ならばいっそ…
「俺は準備して存分に、完璧にお前をぶっ殺す!」
「はっ……ってえぇ!?どういう経緯でそういう結論に至ったんですか!?」
「円満解決しておいたよ!」
「してないです!」
ぼうっと考えている間に事態は恐ろしくなっていた。
「じゃあな!クソモブが!はっ!次会う時はてめぇの命日だな!」
西の魔法使いさんは物騒な捨て台詞を吐き、もくもくどろんと消えていった。
自分の不運さとコミュ障さに絶望していると、北の魔法使いさんがにっこりと笑顔を向けてくれた。
「大丈夫!それまでにお家に帰ればいいんだよ。」
「…でも、どうやって?」
「エメラルドの都に大魔王オズさまがいるからその人に聞くといいよ!」
「オズ…さま……。」
昔読んだ物語が段々と鮮明になっていく。
そうだ。これから冒険が始まっていくんだ。
期待が胸の4分の1、残りは不安と恐怖が渦巻いていた。
「それじゃあこの黄色いレンガの道を辿って行けばオズ様に会えるから!頑張って!」
「…は、はい。」
私は震える足でそのレンガの道を進み始めた。
しかし物語のようには行かず、スキップも出来ず笑顔にもなれず、ガチガチだった。
