第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
「出久?僕は北の魔法使いだよ。」
「……良い魔女?」
「ううん。良い“魔法使い”」
少し頭が混乱するが、なんとか状況を整理する。
やっぱりここは、“オズの魔法使い”の中…?
なら、今だけでいい。ずっと大好きだったこの物語の主人公になれるのなら、今だけ、信じてみようかな……。
「それで、いず……北の魔法使いさんはどうしてここに?」
「お礼を言いに来たの!ほらあそこ。」
出久くん…いやいや北の魔法使いさんはそう言うと、私の家の下のところを指差した。物語通りだとそこには
「東の魔女さんを倒してくれたからね。」
家の下から足が2本飛び出ている。
確か、家の下敷きにしちゃうんだよね。結構グロイな……。
「彼女悪い魔女でね、困ってたんだよ。ありがとう!」
「あ、その…事故で……すみません…。下敷きに…。」
北の魔法使いさんは眩しい笑顔で喜んでいる。
讃えられている筈なんだけど、やっぱり下敷きにしちゃうのは悪かったなと反省する。悪い人でも…やっぱり下敷きにしちゃうのは……。
そう頭を垂れた時だった。また聞き覚えのある声が耳に響く。
「まったくだ!!どうしてくれんだよ俺が殺すつもりだったのにこのクソモブが!!」
…こんなセリフで登場してくるキャラクターを私はこの物語で見たことない。
でもこの激しくて歯に衣着せぬ物言いは…
「……勝己くん…?」
「あ?誰のこと言ってんだあ゛ぁ!?俺は偉大な西の魔法使いだ!そんなんも知らねぇのかクソモブ!」
確かに脅威だとは思っていたけれど、まさか自分はあの悪い魔女を勝己くんにやらすなんて。ラスボスとは考えたことあったけれど、まさかここで伏線が回収されるなんて思ってもみなかった。