第20章 醒めない夢
Side切島鋭児郎
「お荷物…いやなんです。」
泣きそうな顔から、ポロリとひとつ零れた。
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保健室に着くと、リカバリーガールがいて、何かを察したように安藤の手を握った。
「連れてきてくれてありがとうね。」
そうひと言言って。
「安藤、大丈夫すか?体調とか」
「ううん。そういうんじゃないさね。」
安藤は俯いていて、顔が良く見えなかった。
力になりたかった。
大切だから。目の前の小さな此奴が、大事だから。
安藤から、ポロリと言葉が零れた。
「お荷物…いやなんです。」
「そうかい。」
「私も、私に出来ることをしたくて、でも、何が出来るのかも、分からなくて。」
「うん。」
「守られるだけなのは…嫌なのに…」
言葉と一緒に涙も零れた。
俺は、ただその姿を見ていた。
どうすればいいか、分からなくて。
「俺に…なにか出来ることはないんですか?」
思わず声がでた。
ヒーローになりたいから…とかじゃなくて、ただ心から、そう思って。
「鋭児郎くん…」
安藤が、俯いていた顔を上げてこちらを向く。
涙で潤んでキラキラした瞳は、いつにも増して真っ直ぐ胸に刺さった。
「ありがとうね。安藤は少し、いいや、沢山無理してたんだよ。」
「む、無理なんか」
「してるさね。」
安藤の言葉を遮ってリカバリーガールが声を出す。
「いきなりこんな学校の、こんなヒーロー科に連れてこられて。」
『それと、こいつの個性と来た理由だが、機密事項になっている。』
安藤が転入してきた時、相澤先生はそう言っていた。個性も、来た理由も、秘密だと。
「あの…安藤はどうして、雄英に来たんですか?」
聞いてはいけないと知っていた。
でも、知りたかったんだ。彼女のことが、目の前の小さな少女のことが。大切な、安藤のことが。