第20章 醒めない夢
最近、私はどうかしている。
したいことが、増えている。
出来もしないことを、したいと思っている。
なんで彼の手を握ってしまったんだろう。そのせいで、出久くんにあんな顔させてしまった。
『君は守られる立場なんだ。分かってくれ。』
警察署ではずっとそう聞かされた。
頭では分かってるはずなのに、どうしても最近、体が動いてしまって、迷惑ばかりかけて。
『守られるだけなんて嫌だ。』
その言葉の責任を、私は知らなかったんだ。
確かに怖かった。あの、死柄木弔さんとあった事件。
彼は怖くなかった。ほ、本当に!ちょっと唇切れてて、ちょっと怖いなぁなんて思ったけど、でも、その後の方がもっとずっと怖かった。
みんなに迷惑かけるのが、1番怖かった。
タダでさえその前に障子くんに迷惑かけてたっていうのに。
「ひよこー?ご飯!早く来なさい!」
「いらない。ごめん。食欲ないのー!」
その事件の次の日は、事件の事がいい免罪符になって私は誰とも会わずにすんだ。
1日中ベッドの中で丸まって、ずっと耳を塞いだり目を塞いだりしてた。
最近の私は、ドロドロが、自分が、溢れてきて止まらなくておかしくなっている。アノ時全部塞いだはずなのに。
どうにかして止めないと。
だってドロドロと一緒にアノ時のことも一緒にくるから。ドロドロが溢れるといつも誰かに迷惑かける。
止めないと。出来もしない望みを、夢を、早く止めないと。
溢れてくる夢を、早く諦めないと。
散々耳を塞いだ次の日は、立ち上がるのも億劫で、制服に触れると、なんだかビリビリと電流が流れたような感じがした。
何とか制服を着ると、制服の裏に針が付いているんじゃないかと思った。それほど着ていたくなかった。
「学校…行きたくない。」
それは、突然に来る感情で。
みんなが嫌いな訳じゃない。
学校が嫌いな訳じゃない。
先生が嫌いな訳じゃない。
ただ、溢れてくる自分が怖くて、誰かに迷惑かけるのが、怖かった。
「独りで、生きていけたらなぁ…。」