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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第20章 醒めない夢


Side緑谷出久


「ひよこちゃん!」


人混みをかき分けて、その華奢な肩を掴むと、ひよこちゃんはぺたりと座り込んだ。


正面に立っていた…であろう死柄木も、目を向けるともうどこにも居なかった。


「大丈夫!?怪我は!?」


肩を強く掴んだまま声をかけると、ひよこちゃんはハッと振り返り、僕の顔を見ると少し怯えたような顔をした。


「あ……えっと、大丈夫。」
「なんで話しかけになんか!君が無茶する必要ないのに!」
「あ……ごめ、ごめんなさい。平気…。全然、平気!ま、また迷惑かけた。本当、ごめんなさい。」
「へ?心配だったけど、迷惑とかは」
「心配も、迷惑だよね…。私、無駄なことばかりして…本当、ごめんね。心配しないで、私は平気だから。」


ひよこちゃんの肩が震え始めて、体温が下がっていくのを感じた。


ひよこちゃんは下を向いてごめんと言ったあと、こっちに向いて口をぐにゃりと曲げて笑顔をつくった。誰にでもすぐわかるほど、変な笑顔だった。


その後、ショッピングモールは一時的に閉鎖。区内のヒーローと警察が緊急捜査にあたるも、結局死柄木は見つからず、僕とひよこちゃんはその日のうちに警察署に連れられ、敵連合の捜査に加わっている塚内さんに、主犯、死柄木弔の人相や、会話内容などを伝えた。


僕の後に事情聴取を終えたひよこちゃんは、部屋から出てきてからずっと下を向いていた。どんな話をしたのか聞いても、言えない、の一点張りだった。


一緒に警察署からでても、下を向いたまま彼女は前を向かなかった。オールマイト、いや彼女からしたらヤギさんが居るのにも気づかないほど。


「オーっ…とっと……ヤギさん!なんで?」
「や、ぎさん?」


彼女は顔を上げると、手で頬を掴み、自分の顔を無理矢理笑顔に変えた。


「よかった。無事でなによりだ。安藤さんも、よかった。」
「ごめんなさい。」
「?…助けてやれなくて、済まなかったな。」
「いえ。」
「たす、け…」


その言葉を聞くと、彼女の歪な笑顔がみるみる崩れて、また下を向いた。


「ごめん、なさい。ごめんなさい。わたし…最近どうかしちゃってて…ほんとに、出過ぎた真似ばっかり。あの、帰ります。ひ、1人でも大丈夫!迷惑は掛けません!では!」
「あ、安藤さん!?」


ひよこちゃんは1人、闇の中へ駆けていった。


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