• テキストサイズ

夢を叶える方法【ヒロアカ】

第20章 醒めない夢




ジジッ


『明日はひよ__5歳の誕生日だよー。ワクワ__ちゃうね!』


『わくわくしない。た__ょうびね、わた___ないでほしい。』


『んー?どうして?』


『だっ__こせいま__ないんだもん。』


『大丈夫。きっ___キな個性がでる!だってひよこ____お父さんみた__個性がでるよ!』


お母さんが料理を作ってる。こっちは見てない。
たしか、いい匂いで、暖かかった。


ぼやぼやとした記憶の向こうに、その懐かしい姿が映っている。私は、その時凄く不安だったことを覚えている。


だって、お父さんみたいなヒーローになりたかったから。お父さんみたいなステキな個性が欲しかったから。


『そうかなぁ…。』


『うん!あっ、お父さん帰ってきたよ!』


ザザッ


『ただいまひよこー!』


『おとーさん!』


ジジッ


だめ、これ以上は。ダメだ。
これ以上はもう、


「見たくない」


そこからの記憶には、両手で目を塞がなくちゃいけない。


記憶の映像がぐにゃぐにゃと歪んで、それでも色濃く映るのは黒。


黒と、黒に限りなく近い赤。
その上に、白い花弁が浮かんでいる。お母さんの大好きな花。


『おか、あさ、ん?お、とうさ、ん…?』


痛い。


「目を塞がなきゃ」


ずっとそうしてきた。
逃げて、見ないで、背を向けて。


だって、そうすれば楽だった。


もう全部自分が悪いんだってことにしよう。


だってそうだよね?全部私のせいだもんね。


お父さんにも、もう“会わない”ようにしよう。絶対に。


もう、思い出さないようにしよう。
カラッポだって、ことにしよう。


それで私は、下を向いたまま歩いている。


心の中にドロドロを隠したまんま。
それでいいと思ってる。それがリアルでそれが社会だ。



でも最近、困ってるんだ。
そのドロドロが溢れてくるの。邪魔しちゃダメなのに。みんなの邪魔なんて、したくないのに。


上手く目を塞げなくなって、


それで私、また迷惑かけちゃった。


/ 728ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp