第18章 あなたは特別な人
パタンと扉が閉まると、勝己くんは私を部屋の端にぶっ飛ばした。
「うぎゃっ」
「おい、選べ……。これをキレイさっぱり消すか、お前も同じ目にあうか、お前がキレイさっぱり消えるか……。」
「ひっ……。」
とてもヒーロー志望の人のセリフとは思えなかった。
恐怖で口をパクパクしていると、勝己くんは両手をバチバチと爆発させながら言った。
「ほぉ……消えたいんか……。」
あ、死ぬ。
「消えたくない!!死にたくないよ!!消します!ほっぺたの落書き消します!!ごめんなさい!つい出来心で!!」
「じゃあとっとと消せや!!ふざけたまねしやがって糞カスタマゴが!!いっぺん死ね!!」
「ぐうの音も出ません!!」
「とっとと動け殺す!!」
「ゴメンなさい!!」
その声で私は超特急で部屋をでて、ぬるま湯の入ったコップとティッシュを準備した。準備してる時、おばさんに事の内容を説明したら「自業自得w」って笑われた。
バンっと扉を開くと、なんだかとってもくつろいでいる勝己くんの姿があった。
「準備完了でありま……え?」
「じゃあ早く消せ俺の時間を1秒でも無駄にすんな殺すぞ。」
「は、はい!」
早くやれと言われても、いったいどうすればいいのか分からなかった。
ほっぺた触っていいのかな。
少し戸惑ったあと、おずおずと手をほっぺに近づける。
「し、失礼します!」
「ん。」
ほっぺたをグッと抑え、ぬるま湯に付けたティッシュではなまるを消していく。
そのほっぺたは、白くてぷにぷにだった。
勝己くん、なんも恥ずかしそうじゃない。この人すげぇ…。
しかし汚れはいくらゴシゴシ消しても、なかなか薄くならなかった。
「き、消えない……。」
「消えなかったらマジで殺すお前を消す。」
「ごごご、ごめんなさい!ちゃんと消す!だから動かないで!」
顎をぐいっと抑え、動かないようにする。多分私今、最近話題の顎クイをやっている。三奈ちゃんが憧れるって言ってたな。
静かなのがなんだか気まずくて、声をかけてみる。
「なんで犯人が私だとすぐ分かったの?」
「んなんすぐ分かるわ!分からんとでも思ったか!」
「で……ですよねぇ……。」
勝己くんとの不毛な会話は、この後も結構続いた。
ちょっとずつだけど薄くなっていくはなまるが、ちょっと惜しかった。