第18章 あなたは特別な人
「…人違いですよ。」
私は、何事も無かったかのように玄関の扉を閉めようとした。
「おい…待てや……まだ終わってねぇ……。」
「うぎょ!!」
扉が閉まるすんでの所で勝己くんが自分の足を扉に挟んできた。セールスマンが良くするやつだ。
「ひよこー?何だったー?」
「やー!!!えっと、せ、セールスだよー!!帰ってもらうねー!!」
「そんな力でよく俺に勝てると思ったな…?」
「い、いやっ!?」
ものすっごい敵顔で扉の隙間から覗き込んでくる。もうホラー映画だ!あのピエロが排水溝から覗き込んでくるやつだ!
そして、私の奮闘虚しく扉はガバッと開けられた。
勝己くんはとんでもなく怖い顔のまま私の腕を引っ掴んで引きずる。
「きゃー!!侵入者ー!!」
「えっ!ちょっとひよこなに!?……って勝己くんじゃない。後でお菓子持ってくわね。」
「…っす。」
「わー!勝己くんだー!遊んでー!」
「うるせーガキ!今はだめだ!」
「キャッキャッ」
キャッキャッじゃないでしょうが!
なんで引きずられていることに誰も何も言わないんだ!
これがご近所の定めなのか……としんみり思いながら、私は自分の部屋へ引きずられていった。