第18章 あなたは特別な人
「私はもうそろそろ行くけど、君はまだ居るのかい?」
「はい。起きるまで待ってます。」
オールマイト先生が去っていったあとも、私は保健室に残ることにし、2人が起きるのを待った。
出久くんが起きたら、ごめんなさいって言おう。
勝己くんが起きたら、お疲れ様って言おう。
そうボーッと外を眺める。
外は夕焼けで、何となく昔を思い出した。
夕方は、お父さんが帰ってくる時間だったな。
『ひよこ!大きくなったら何になりたい?』
『わたし、おとーさんみたいになりたい!おとうさんみたいに、かっこいい___』
「ひよこちゃん…!」
「ひょぁっ!!い、出久くん!」
いきなり出久くんの声がして振り返る。心臓が口から飛び出しちゃうかと思った。
「あのさ……」
「…あっ!さっ、さっきはごめんなさい!」
「へ?」
出久くんが起きたら言おうとしていたことを開口一番に言う。出久くんよりも、先に。
「さっきね、えっと……ごめんなさい。」
「そんな……」
「ほんとはね、出久くんには、分かってもらいたいなって言うのがさ、あってさ……でもやっぱり悪かったなぁって、思って……。その…ごめんね。酷いこと言って。」
「そんな、僕こそごめん。」
出久くんは大きな真っ直ぐな声で謝ってくれた。
ちょっと安心した。
「僕もね、酷いこと言った。本当はさ…あんな真面目な理由だけじゃなくてさ、合宿にひよこちゃん居ないのはやだなって思ったのもあったんだ。」
「そ……なの?」
「だからさ、嫌な言い方してごめん。」
「いっ、いいってば!大丈夫!!」
2人の間に微妙な時間が流れる。
私は、先生に言われたことを思い出し、ゆっくりと話し始めた。
「あのね……確かに失礼だったなって。後で謝りに行こうと思ってるの。…でもね、後悔もしてないの。」
「うん…。」
心が熱くて、するすると言葉が溢れてくる。
「たとえやり直せるとしても、私は同じ選択をすると思う。私は、みんなより、普通よりもずっとずっと頑張らないといけないの。強く、なりたいから。」
そう言うと、出久くんはハッとしたように、大きな目を真ん丸にした。
「そっか…。ずっとずっと……。」
「私、頑張るね。」
「うん。」
“普通よりもずっとずっと頑張らないといけない”
その言葉に、彼はどこか懐かしそうな顔をした。