第18章 あなたは特別な人
Side緑谷出久
「失礼しますっ!!」
救護室のベッドで横になっていると、ものすごい勢いで扉が開き、聞きなれたあの声が聞こえてきた。
僕は咄嗟に寝た振りをした。
ちょっぴり、気まずかったから。
「先生!荷物を持ってきました!」
「お!ありがとね、安藤少女!」
「わっ、オールマイト…先生!」
「怪我人いるからもうちょいボリュームさげてね!」
「す、すみません…!」
少し息を切らしながら彼女は大きな声を出す。
彼女の両手、肩は僕とかっちゃんの荷物と制服でうまっていた。
そっか…荷物を持ってきてくれたんだ…。
ケンカをしてしまったのに、持ってきてくれた。
ひよこちゃんとケンカをしたのは初めてで、今少し後悔していたところだった。あんな言い方してしまって…ひよこちゃんだって一生懸命頑張っていたのに。
「あの…先生……。」
「ん?どうした?」
荷物を下ろしたひよこちゃんが、少し遠慮がちに声を上げた。思わず耳を澄ます。
「2人は……仲が悪くなってしまいましたか?もう…仲良く…なれないんでしょうか……。」
「え?」
その声はすごく不安げで、思わず薄目でその表情を確かめる。
「モニタールームで見てて…ケ……ケンカ…していた様だったから……。」
その顔は、すごくすごく不安げで、心配そうだった。まるで、自分のことのように。
「うーん。あの2人、いつもの事じゃない?」
「でっ……でも……悪化は…していませんか?」
「それはきっと…多分大丈夫!ちゃんと最後協力していたところ、見たろ?」
「は…はい。」
オールマイトが大丈夫だと言っても、ひよこちゃんの表情はあまり変わらなかった。
でも、仲が悪いことなんて前からずっと変わらないことなのに、なんで気にするんだろう…。
「そんなに心配かい?あの2人のこと。いつもの事じゃないか。」
僕の疑問と同じ質問をオールマイトがした。
「…2人は…出久くんと勝己くんは…大切で…2人は幼馴染だから…。私の、エゴかもしれないけど……仲が悪いのが…寂しくて……。2人はやっぱり、特別なので…。」
ひよこちゃんは、両手を胸の前でぎゅうっと握りながらそう言った。