第17章 コンクリートを漂流
「い…出久…くん?」
出久くんは部屋の奥で、まだ少し怖い顔をしていた。
《峰田、瀬呂チーム。演習試験。レディ、ゴー!》
後ろでブザーが聞こえた。
けど、私はモニターの方を向くような気持ちにはなれなかった。
「ひよこちゃん。僕は……あまり納得いかない。」
「デクくん……。」
「みんなクリア出来なくても最後まで一生懸命戦って、決して諦めない…。みんな頑張ってるんだ。」
出久くんは少し怒った声で言った。
怒ってるところ……あんま見たことない…。もしかしたら、初めてかもしれない…。
私だって……頑張ったのに……。
大切で、憧れで、大好きな彼にそう言われたからかな。
私はカッと熱くなって思わず言い返してしまった。
だって1番、褒めて欲しかった。頑張ったねって、言って欲しかったから。
「でも……私は普通より頑張らないとついていけないから。一生懸命考えた結果だよ。私、一生懸命戦ったんだよ!」
「一生懸命やって不合格になっちゃった人に失礼だろ!」
「関係ないじゃん!」
「関係あるよ!」
「安藤に緑谷!いい加減にしときな!」
リカバリーガール先生の声に思わず口を止めた。
先生の方を見ると、先生はちょっと怒ったような顔をして言った。
「喧嘩すんならここから出ていきな。うるさくてたまったもんじゃないよ。」
そっか…これ、喧嘩なんだ……。
「す、すみません…。」
「……ごめんなさい。」
先生にはそう言われたけど私の心はまだ治まっていなかった。
ここから出ていく気もサラサラなかったし。
「私は峰田くんと範太くんの試験見たいので残ります。」
「僕も見たい。」
2人で顔を見合わせてバチバチと火花をとばす。
出久くんはいちばん右で、私はいちばん左で、イライラした心のまま2人の試験を見ていた。