第17章 コンクリートを漂流
彼のことを頭に浮かべながら廊下を歩く。
緊張を解してくれた、あの優しい彼のことを。
謝らないとな…。せっかく応援してくれたのに。
そして、モニタールームの扉の前に立つ。
すぅっと深呼吸をして扉を開き、中に入る。
中に入ると案の定、みんなに心配された。
「ひよこちゃん!」
「安藤くん!」
「安藤さん!」
天哉くんもももちゃんもつゆちゃんもお茶子ちゃんもいて、一瞬すごく驚いて目を見開いた。
「みんなもきたの?」
みんながいるのが嬉しくて少し笑顔になったけど、みんな(特に天哉くん)は物凄い剣幕で、笑顔はすぐ消えた。
「そんなことより試験の話だ!なぜゴールしなかった!」
「わざと落ちたんですわよね?何故そんなことを?」
「あっ……えっと」
あまりの熱に、私はたじろいで1歩退いた。
「ひよこちゃん、どうしてあんなことを?」
奥から出久くんが声を上げた。
出久くん、眉毛が…ぐってなってる…。真剣な時の顔だ。
私もしゅんと眉毛をさげ、下を向いた。
「応援してくれたのに、ごめんなさい。私、このままじゃ嫌だと……思って…。変わりたいと、思って……。」
「ひよこちゃん……。」
「逃げることしかできないなんて、嫌だったの。強く、なりたくて…。わざと補習、とるようにした。」
「そういう事だったんですわね…。」
顔を上げると、今度はみんなが眉を下げていた。
「ごめんなさい。……林間合宿のお土産話、たくさん聞かせてね。」
「…えぇ。」
「私、ひよこちゃんと一緒に行きたかったわ…。」
頑張って笑顔を作るも、みんなはまだちょっと微妙な顔をしている。
「……私補習で、きっとみんなに追いついてみせる!…プ、プルスウルトラ!!ってやつだよ!プルスウルトラしてみせる!!」
初めて出したその言葉は、なんだか少しこそばゆくて、でも、すごく好きな言葉だなと思った。
「…ケロ…そうね!」
「それにまだどんでん返しがあるかもしれないしね!」
みんなは笑顔になってくれた。
1人、出久くんを除いて。