第17章 コンクリートを漂流
画面の向こうでは、峰田くんが1人で頑張っていた。範太くんはなんと相手の手にかかってしまったみたいで。
相手はミッドナイト先生。
すっごくすっごく強そうだ。
そんな相手に1人きりだなんて。
峰田くんは逃げていて、峰田くんの行動に、私は強い既視感を覚えた。
でも峰田くんは、逃げてるんじゃなかった。
戦ってた。
先生と。
たった1人で。
彼の個性をうまく使って先生を動けなくして、ちゃんと範太くんを連れて、ゲートを潜った。
私も…個性を使えたら…。
右目の眼帯に触れてみた。
この奥に、私の個性がある。どれだけ頑張っても、誰を助けることもできないヤツだ。
画面を見ていると、頑張っている峰田くんを見ていると、心がクールダウンした。
自分で決めたことだから、後悔したくない。でも……出久くんの言う通りだった…。失礼だったかもしれない…。
そして向こう側の、出久くんの居た場所を見ると、そこにはもう誰もいなかった。
誰もいないそこを見ると急に心がぎゅうっとなってきて、左手を右手で包んで握った。
「ひよこちゃん、デクくん行っちゃったよ?」
「ど……どうしよう…。私…酷いこといった…。」
顔が急激に青ざめていくのがわかる。
さっきまでカッとなってて何とも思わなかったけど…。
本当にどうしよう。
「緑谷くんがあんなふうに怒るなんて珍しいのではないか?」
「うん…。うちもあんなデクくん見たことなかった…。」
「試験の前で焦りが出てしまったのでしょうか。」
「ケロ…ひよこちゃんも、ちょっとカッとなっちゃってたわね…。」
私はもう顔面蒼白で、手も氷みたいに冷たくなって、でも涙だけは熱く流れていった。
「どうしよう…。出久くんとケンカするの初めてだ…。どうしよう。」
出久くんとケンカしたことなんて、というかケンカしたことなんて1度も無い。どうすればいいかわかんない。
私が私から動けることなんてそうそう無くて、やっと動けたと思ったのに、やっとこれがいいって自分で思えたはずなのに、また間違えちゃって。
熱く流れる涙は、自己嫌悪。
自分はなんて嫌な奴なんだって思っちゃう気持ち。
後悔だけはしたくなかったのに、胸がじくじく痛む。
「どうすればいいかわかんないよぉ……」