第17章 コンクリートを漂流
「おい安藤。」
廊下を歩いていたら声をかけられた。
相澤先生だぁ……。
怒ってる。…気がする。声に怒りがこもっている……そんな気がする。
ぶるりと1つ身震いをして、でもキッと先生の方を向く。
「はい。」
「なぜゴールしなかった。なぜわざと落ちるなんて真似をした?」
先生はギリギリギリギリと睨んでくる。
うひぃ怖い!
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
絶対後悔なんてしない!してないって!
「私、ずっとモヤモヤしてたんです。これで、いいのかなって。」
「はぁ…。」
先生と向き合って、ちゃんと目を見る。
「あのですね…えっと……前に言いましたよね。守られるだけなのは嫌なんだって。」
ずっとなんでモヤモヤしてたのか分からなかったけど、さっき分かったんだ。
あのモヤモヤは、私が前に先生に話した言葉だ。
『守られるだけなのは嫌だ。みんなの隣に胸を張って立っていたい。』
「このままじゃ、何も変わらないって思ったんです。同じままなんだって、思ったんです。」
「……。」
私はぎゅうっと両手を握りながら、つまりつまり話した。
「今出来ることは今日、全部出し切りました。出し切った…と思います。私、このままじゃ逃げることしかできない……。変わりたいんです。せめて自分だけは、守れるようになりたいんです。」
「……。」
相澤先生は、何も言わなかった。
「私は普通より、ずっとずっと頑張らないといけないんです。だから、補習を受けさせてください。」
「お前、補習受けるために…。」
「……。」
「……お前はそれでいいんだな?」
「はい。」
「林間合宿いけなくていいんだな?死ぬほどきついぞ?」
「構いません。みんなに、追いつけるなら。」
キッと目を見てはっきりと言い切った。
胸がスっとする。
相澤先生はそこまで聞くと、わかった。と言ってクルリと踵を返して去っていった。
その後ろ姿を見て、心に風が吹いた。
サーッと爽やかな風が。