第17章 コンクリートを漂流
Side緑谷出久
「ゲートが見えたわ。」
「安藤くんも合格か。ハラハラしてしまったが、さすが安藤くんだ!」
ひよこちゃんの画面の方に、あのちょっぴりファンシーなゲートが見えた。ひよこちゃんが安心したような顔でそのゲートに近づく。
ここまで来れば校長先生の手も届かないだろうと僕もホッと一息をつく。
しかし彼女は、あと一歩でゴールという所でピタリと足を止めた。
「えっ?ひよこちゃん……?」
「な、なぜ、ゴールしないのですか?」
「いくら時間があるといっても……彼女はいったい何をしているんだ?」
ひよこちゃんは、下を向いたまま全く動かなくなった。モニターの故障かとも思った。
すると、彼女はおもむろに動き出した。
今まで大切そうにしていた左手を、だらんと投げ出して。
そして彼女は天を仰いだ。
彼女のその顔は、なぜだかとても満足そうに見えた。
彼女のその不可解な行動に、僕らの頭は疑問符でいっぱいになった。
《芦戸、上鳴チーム。安藤ひよこ。タイムアップによりリタイア。》