第17章 コンクリートを漂流
Side緑谷出久
ひよこちゃんの方の画面を見ると、案の定彼女は右往左往していた。
「なんというか…右往左往を体現しているようだな……。」
そう飯田くんが呟く。
そして何か見つけたのか、彼女は建物の中へ駆けていった。
「建物の中入って何するつもりかしら。」
「もしや、高いところに登るつもりか?」
そして、必死に階段を上がっているひよこちゃんが画面に映る。
「愚策ですわ。」
八百万さんの言葉が、何故だか僕にも刺さる。
でも、高いところに登るの、確かに良い策だとは思えない。
「見晴らしが良いところを目指して高い所へ行くのは分かりますが、高い所は総じて足場が安定していません。また、見晴らしが良ければ敵からも見つかりやすい。」
そうなんだ。
高いところに登るのは、デメリットの方が多い。
画面の向こうのひよこちゃんは階段を登り終えて、今は梯子を登っている。
伝えたくても伝わらない。
ううん、伝えちゃだめなんだ。
ひよこちゃんは1人で頑張ってるんだから。
画面の向こうの彼女に、僕はただ心の中で頑張れと呟いた。