第17章 コンクリートを漂流
Side 緑谷出久
モニタールームからひよこちゃんが出て行った。
凄く緊張していたみたいだったけど、大丈夫だったかな?
それから、蛙吹さんと、飯田くんと、八百万さんが来て、一緒に皆の試験を見ていた。
麗日さんたちの試験が終わって、麗日さんの咄嗟の判断に感動した僕は、モニタールームに居てよかったぁと心底思った。
「次は誰だ?」
「芦戸さん上鳴さん、それから、」
「ひよこちゃんの番だわ。」
「うん。」
次はひよこちゃんの番だと聞くと、なぜだか僕も緊張し始めた。さながら子供を見る親の気持ちだ。
それにしても、校長先生。
一体どんな戦い方をするんだろう。
《芦戸、上鳴チーム。安藤ひよこ。演習試験。レディ、ゴー!》
試験が始まった。
画面の向こうのひよこちゃんは、フードを深くかぶって、左手をぎゅうっと抱きしめながら歩いていた。ゲートの方へつま先をクイッと向け、一歩一歩着実に進んでいく。
「うん…!ひよこちゃん、落ち着いて!」
「なんか…先生が来る気配が全くないわ。」
「ええ、なんだか試験じゃないみたいですわ…。」
しかし、そういった矢先だった。
違う場所の映像に、芦戸さんと上鳴くんが(多分)悲鳴をあげながら走っている映像が映った。
「えっ!!ちょっと目を離したすきに!」
その攻撃をしているのが校長先生だと分かるのには、もうちょっと時間がかかった。だって、あんなに小さい校長先生からこんなに大きな攻撃が生まれるだなんて。