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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第17章 コンクリートを漂流




顔を上げると自然と、


「おとうさん……?」


と口から零れた。


そしてもう1度目の前の人を確認すると、もちろんその声の主はお父さんなどではなく、鋭児郎くんだった。


「いや、お父さんじゃないぞ…。」


明らかにちょっと戸惑った彼を見て、私の顔は下からだんだん赤くなっていった。


さっきまでのもやもやを押し退けて、その感情は心に入ってくる。


この気持ちは知っている。お父さんと呼んでしまって恥ずかしいのと……この前向き合ったあの気持ちだ。


「あ……え……っと、な……なんで……ここに…?」
「さっき叫んで廊下走ってっただろ?様子変だったし、心配でさ。」
「え……あれ…見てたの……?」


それを聞いた私の顔は更に赤くなって、それはもう顔が熱くて熱くて堪らなかった。


思わず顔を膝に埋めるも、彼の声でまたすぐ顔を上げた。


「緊張してんのか?」
「緊張…しないわけないじゃんかぁ……。」
「はははっ」
「笑い事じゃないよー!」


むーっ!と私は立ち上がって鋭児郎くんをぽかぽか叩いた。
だって笑うんだもん。私は真剣に悩んでるのに!


「意外といてぇ」
「鋭児郎くん硬化すればいいじゃんー!!」
「硬化すると手痛いぜ?」
「いいもん!」
「ほれ、もうそろそろ始まるぞ?ちゃんと動けんじゃん。」
「え?」


確かにガチガチに固まっていた体はほぐれてて、なんか、体には無駄な力がはいっていなかった。


「そ、そういう、感じですか?」
「いやどういう感じだよ。」
「あの……いや、なんでもなくて……。」


なんか、そう、仕向けてくれたのかな……。
緊張、ほぐれるように…。


「…あ……ありがとう…。」
「いやいや本番はこれからだろ?」


その言葉で目の前に現実が現れた。


そうだよ。
これからだ。


パチンと頬を叩き、私は前を向いた。


「…うん。頑張る!」
「応援してるぜ!」
「おー!!」


今のおー!!は、頑張るぞ、おー!!のおー!!だ。
さっきのおー!!と、ちゃんと違う。


そして、入口に立つ。


さっき効力を失ってた左手も、なんだか少しだけ力を取り戻してて、私はもう一度左手を握りしめた。


《芦戸、上鳴チーム。安藤ひよこ。演習試験。レディ、ゴー!》


「行ってきます!!」


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