第17章 コンクリートを漂流
Side切島鋭児郎
「わーーー!!!!」
そう叫びながら廊下を走っていく安藤を見た。
目が点になった。
一瞬、不合格で落ち込んだ心がスっと消えて、心が疑問でいっぱいになったが、すぐに答えは出た。
緊張してんだな……。
安藤、緊張したら奇行に走るのか……。
後で様子見に行ってやろうかな。
さっきまであんなに余裕がなかったのに安藤を見たらなんかちょっぴり冷静になれた気がする。
それから暫くして、安藤のもとへ向かっていると、青山と麗日のチームの合格を知らせるブザーが聞こえた。
2人も、受かったのか……。
なんだか、素直に喜べなかった。
そして、素直に喜べない自分が嫌だった。
全然男らしくない。
男らしくいようと思っているのに、心はいつでも正直で、言うことを聞いてくれない。
「はぁ…」
ひとつ大きな溜息をつき、頭をガシガシと掻きながら歩くと、大きな工場地帯の入口の前で小さく小さくまとまっている安藤を見つけた。
その姿を見たら、なぜだか心がホッとしたんだ。
多分、あれだ。自分より緊張してたり落ち込んでたりする人を見ると逆に冷静になるあれだ。
「大丈夫か?」
そう声をかけると、安藤はゆっくりと顔を上げた。
実技用に結った髪はボサボサになっていて、少しショボンとした不思議そうな顔で、
「おとうさん……?」
と呟いた。