第17章 コンクリートを漂流
それから暫く私は、会場入り口のところに、1人蹲っていた。
準備運動もした。
アップもした。
イメージトレーニングもした。
でもなんだか足りない気がして、でもなにも思いつかなくて、ただ蹲った。
「んん……。」
地面にペタンと腰を下ろし、膝を腕で抱き寄せて、自分が1番小さくまとまれる体勢になって、膝におでこを擦りつけた。
なんでこんなにもやもやするんだろう。
どれくらいそんな体勢でいたんだろう。
私の耳にあのブザーが届く。
《麗日、青山チーム。条件達成!》
そっかぁ……お茶子ちゃん達合格かぁ…。よかった…。
でも、ということは、次は私。
そう思うと心臓がドクンと大きく跳ねた。
「んんぅぅう…。」
心のもやもやが声になる。
手も足も冷たくてガチガチで、さっきの左手にももうなんの力もなかった。
そんな時だった。
「大丈夫か?」
音がした。
人の、声だった。
その音は、頭の上から聞こえた。
優しく、暖かいその響きが、あの懐かしい声に重なった。
その声のお陰で一瞬、この不安が霧散していった。