第16章 合理的はなまる
私には、何がどうなったか全然分からなかったけど、でも、2人のクリアがただただ嬉しくて、ぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
「凄い!すごいぞー!!やったー!梅雨ちゃん!常闇くん!ダークシャドウくん!!……でもなんでクリア出来たんだろう?」
「蛙吹さんが個性を上手く使ってたんだよ。」
「…かえる?」
「そう、蛙。蛙っぽいことは何でもできる。」
出久くんがモニターに向いていた目をこちらに向けて、説明しようとしてくれている。ちょっぴり自慢げだ。
でも…かえる?
ぽくぽくぽく…ちーん。
頭でかえるを想像したものの、ぴょんこぴょんこ飛んだり跳ねたり…舌がべろっとでたり……緑だったり…けろけろ言ったり…出来ることってそれだけなんじゃないのかなと思う。
「蛙ってね、異物を飲み込んだりした時、自身の胃袋を吐き出して洗うことが出来るんだよ。」
「え゛っ!?」
胃袋を、吐き出して洗う…!?
そんな映像もまた頭の中で想像されていく。
けろけろっと鳴きながら川で洗ってる…。かえるが…。自分の胃袋を……?綺麗になった自分の胃袋を飲み込むかえる。
なんだか日本昔ばなしのお婆さんみたいだな。
それにしたら……
「…なかなか…グロッキーだね。」
「うん。なかなか人前ではできない事だよね。でも、蛙吹さんは咄嗟の判断でカフスを胃の中に入れたんだよ。それで、そのカフスを胃袋から出してダークシャドウに預けたんだ。蛙吹さんは人前ではなかなか出来ないことをやってのけたんだよ。すごく、カッコイイ…!!」
出久くんの目がキラキラ輝いていた。
小さい時、一緒にテレビを見て、オールマイトが出てきた時も同じ目をしてたなぁ。なんて考えながら私は、出久くんのその宝石みたいに光る目に見とれた。
「ひよこちゃん?」
「あっ、ううん。何でもない!やっぱり梅雨ちゃんはさすがだね!」
「うん!」
「次は誰かな?」
「次は…あっ!飯田くんと尾白くんだ!」
そして画面に映った2人はやっぱりどこか緊張しているような顔つきで。(天哉くんの顔は隠れてるけど多分緊張してるって動きだ。)
天哉くんは、あの事件の前よりもずっとずっと大人に見えた。