第14章 青くさい春。
Side切島鋭児郎
「鋭児郎くーーーん!!!」
ずっと俺の頭の中を占領していた声が聞こえた。
何度追い出しても、追い出しても、すぐに俺の頭の中を占領した声。
「鋭児郎くん!!!まってよ……まってよーーー!!!!」
「あ、安藤…?」
その声に振り返ると、安藤がいた。
髪の毛はボサボサで、ちょっと鼻水たれてるし、今にも泣きそうな、そんな顔。お世辞にも綺麗とは言えない。でも、なぜだか俺にはその姿が、とてもキラキラして見えた。
「なんで」
「どっか行っちゃわないでよ!!」
泣きそうな顔をしながらすぐ側まで全力疾走してくる。
そして、俺の制服の袖を掴んだ。
「あの、あのね、言わなきゃいけないこと、話したいこと、沢山あるの!!」
安藤はその大きな目で必死に俺を見つめた。
心臓がドクンドクンと大きな音を立てる。
降られたんだ。俺は失恋したんだから早くこの気持ちを消さないと。そう思っていたのに。
まだ、俺は。