第14章 青くさい春。
「この間は、逃げてしまってごめんなさい。」
「…うん。」
「私、あの時ね、こんなに人の気持ちって重くて大切なものなんだって……初めてわかった気がして、初めて……ちゃんと知った気がして……。こんなに大切で重たいもの、どうすればいいんだろうって、わかんなくなっちゃって…逃げちゃったの。」
「うん。」
安藤は、詰まりながらもゆっくりゆっくり、話してくれた。何にでもまっすぐで、やっぱり、安藤は安藤だ。
「でも、今ね、どうすればいいかちゃんと分かったよ。ちゃんと、向きあう。ちゃんと返事する。」
そう言って安藤は深呼吸をすると、今まで見たことないくらい真剣な顔をして、言った。
「私、好きな人がいるの。ずっと……前から。」
「…あぁ。」
心臓に針が刺さったみたいな痛さだった。
知っていたけれど、やっぱり本人から聞くと、キツイものがあると言うか……。
でも、どこか清々しかった。
「こんなに大切な気持ちを伝えてくれて……ありがとう。」
「こっちこそ、返事、ありがとな。」
安藤はずっと、真っ直ぐ目を見て言ってくれた。
嬉しかった。
こんなに真剣に、大切に考えてくれて。嬉しかった。恋じゃないとしても、大切にしてくれたのが、嬉しかった。
安藤の頭に手を乗せてありがとうな。と言うと、安藤は安心したのだろうか、子供のように泣き出してしまった。
「お、おい泣くなよっ!な!」
「だっ、だって…もう、話せないかと、思って…ひっく、怖かった!怖かった…寂しかったよ…ひっく。ちゃんと、話せて、ひっく、嬉しい。」
ボサボサで、ボロボロで、涙もボロボロこぼして、泣き虫で、それでも俺は、そういうところが……